「疑わしきは罰せず」、「疑わしきは被告人の利益に」という法諺があります。刑事裁判において冤罪事件を起こさないために疑わしい場合や怪しいケースでは被告人を罰せず有利な判決を出すという原則です。この場合、説明責任、立証責任は検察側が負います。一方民事裁判はそもそも人を罰するための制度ではないため、「疑わしきは罰せず」の原則は無く、立証責任は原則として裁判によって利益を得るもの、つまり原告側にあるそうです。

では出入国在留管理庁への在留資格申請の場合はどうでしょう。資料の立証責任は申請人側にあるとされています。在留資格認定証明書交付申請(招聘、呼び寄せ申請)や在留資格変更や更新許可申請の場合、申請書と共に疎明資料を添付しますが、その許可を得るのに必要な資料を決めたり、集めたり作ったりするのは本人申請の場合は申請人、取次申請の場合は申請人が依頼した取次者ということになります。

入管に申請後、問題の無い申請ならそのまま許可(認定申請の場合は交付)されますが、問題のある申請や怪しい申請の場合、不許可(不認定)となる場合も多々あるのが入管申請の特徴です。不許可や不認定の理由は大きく分けて上陸許可基準を満たしてない(満たさなくなった)、在留資格該当性が無い(無くなった)、そして添付された資料の立証が不十分や疑義ありのどれかでしょう。

立証不十分というのは申請書に添付した疎明資料が足りなかったり、内容に問題があったり、外国語資料の翻訳が間違っていたりといった問題で、入管局に要求された追加疎明資料が提出できない場合などが多いと思います。資料に疑義があるというのは、入管局に提出した資料、例えば外国の証明書などがニセモノっぽい、完全にニセモノだったなどです。国際結婚の配偶者ビザの申請で例えば結婚紹介所紹介の案件で交際期間が異常に短く、交際から結婚に至る写真や手紙、通話SNSなどの交際記録がほとんど無いカップルなどは偽装結婚ぽくて不許可不認定になりますが、それも立証が不十分という理由です。

まあ日本の在留資格の制度も少子高齢化や労働力不足、人手不足によりどんどん緩和されてますが、一応在留資格ごとに要件があり、それをクリアしないことには許可を下ろすわけにはいかないというのが入管局や法務省、日本政府の立場であることは普通の皆さんはご理解いただけると思います。そのために「提出した資料が怪しい」という理由で申請が不許可になることもあるのです。それが「疑わしきは不許可に」という入管の原則だと思います。

しかし、それに納得できない人たちが今年出てきました。以下次回に続く(笑)

発展途上国出身の外国人には性悪説をという入管の原則

【業務週報2021/27】