日系人が日本で生活、就労する場合、他の外国人同様、在留資格が必要となりますが日系2世には「日本人の配偶者等」、2世の配偶者と3世、3世の配偶者には「定住者」が付与されます。日本人の配偶者等も定住者の在留資格も日本で就労が出来ますし、就労ビザや技能実習や特定技能などの在留資格と違い職種や転職の制限がなく、家族を伴う来日も可能であるため、経済が不調で治安の悪い南米のブラジル、ペルーやフィリピンなどから人気で重宝されており、「デカセギ」という現象がここ30年続いている状況です。

日系2世、3世とその配偶者は日系人であること、日系人と婚姻していることを証明すれば在留資格が取れますが、日系4世の場合制限があり、3世の親の帯同(呼び寄せ)、4世が未成年で未婚であることが基本的な要件となります。一方ブラジル、ペルーなどの日系人は日系5,6世の世代になっており、日本に来たくても在留資格が取れないという問題が以前から発生していました。2世の祖父母や3世の親が4世の孫や子供を呼び寄せたくても20歳を超えていてという類の問題です。

そのような齟齬を解決するために2018年7月に「日系四世の更なる受け入れ制度」が始まり、定住者ではなく特定活動という在留資格で3世の親が日本にいない、成年者である、既婚者である日系4世でも在留資格が取れるようになったのですが、今度はいろいろな問題というかボタンの掛け違いが。

まず日系人側からすると日系4世が来日する目的というのは先程述べた家族の再会、再統合や日本での就労だと思うのですが、日本政府は日系4世の在留資格創設の目的を「架け橋人材の育成」としており、日本語能力や日本語学習、日本文化の習得が在留資格取得や更新の要件に組み込まれてしまったのです。入国時JLPT N4もしくはN3、2年目にN3合格、かつ日本文化に関する資格を取得しないと帰国という仕組みは悪名高い外国人技能実習制度を彷彿させられます(苦笑)。現地の日系人社会や日系人事情に精通している人間はこんな制度はつくらないと思いますが。

結局年間4千人の受け入れ枠を設けたのに関わらず制度開始2年で実際日本に入国した日系4世は87名という特定技能より悪い結果になったことを受け今回の制度改正になったわけですが、今度は入国時JLPT N5、3年目までにN3かつ日本文化等の十分な理解という具合に日本語要件を緩和というかグレードダウン。日系4世は日系人ではないと日本政府は認めているのに日本語学習を強要するのは何だかなと思いましたが。

日系人側が望んでいるのは日系人の範囲を4世まで広げて定住者の在留資格を日系4世にも付与することだと思うのですが、それを認めない日本政府。日系4世が定住者で来日すると祖父母や親のように非正規の派遣労働者で日本に何年いても日本語を覚えず社会の底辺に押しやられ外国人犯罪がという事態を懸念しているのかも知れませんが日本政府と日系人のボタンの掛け違いには今回驚かされた次第です。

パブリックコメントの締め切りは2021年の2月21日、結果は3月下旬公布ということです。この問題も注視していきたいと思います。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=315000036&Mode=0

【業務週報2021/05】

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