先日台湾のドキュメンタリー映画「九槍 And Miles to Go Before I Sleep」をネットで鑑賞、2022年に制作された映画で金馬獎を受賞するなど評判も高かったので早く見たかったのですが、コロナ後台湾行きの航空券や滞在費が高騰したり、上映している映画館が少なかったりでなかなか機会がなく鑑賞するのに2年もかかってしまったのですね。

映画は2017年で台湾新竹で起きた阮國非(NGUYEN QUOC PHI)という不法滞在の若いベトナム人労働者が警官に9発拳銃で撃たれて死亡した事件がテーマです。当時のニュースでは車を盗もうとしていた阮國非を民警が捕まえようとしたのですが石で反撃され負傷、通報で駆けつけた若い新米警官が至近距離から9発撃って死亡、後に新米警官は過剰防衛の国賠償裁判にかけられ処分されたと記憶しています。

この事件、私が不思議に思ったのは台湾で警官が銃を使用する際は通常可視化の原則で動画が録画されているはずですが、この事件では動画が公開されず何らかの都合の悪い理由があって台湾の警察側が動画を隠蔽したのではないかと思ったのですが、この映画を見てその理由が分かりました。この映画では情報公開請求で入手したらしい新米警官の銃撃のシーンが収録されていますがやはり9発の銃撃はやり過ぎだと言わざるを得ないと思いますし、台湾当局は新米警官のミスを庇うために動画を当初公開しなかったのではと私は推測しましたが。

台湾も日本と同じく少子高齢化が進む一方で労働者不足人手不足が激しく、なし崩しの外国人労働者の受け入れが進んでいますが、失踪者も多く10人に1名が不法滞在外国人という状況で外国人犯罪が社会問題となっていますし、事故や事件で台湾で命を落とす外国人も増えているはず。台湾でこの後味の悪い映画が評価されたのはこういう状況に不安を感じる台湾人が多いことを示していると思いますし、なんとかしないとと思っている台湾人が多いことの裏返しだと思いましたがいかがでしょう。

日本でも2021年に「ウィシュマさん死亡事件(Death of Wishma Sandamali)」が起こりましたが、ウィシュマさんも阮國非と同じく若い不法滞在外国人でしたし、共に受入国側の公的機関の瑕疵過失により命を落としてしまったという経緯は似ていると思います。「ウィシュマさん死亡事件」もこういう真実を描いたドキュメンタリー映画を作ればもっと日本人も外国人労働者の受け入れに関心をもって外国人労働者の受け入れも慎重になるのではと思いましたが。非常に後味の悪い映画ですが機会があれば一度鑑賞をオススメします。【業務週報2024年3月第5週】