この地図はコロナショック前の2019年の在日ブラジル人の日本での居住地を表すものです。2019年当時在日ブラジル人は約21.1万人日本に住んでいたようですが、ブラジル人居住者の多い都道府県を見てみますと1位が愛知県の約6.2万人(約29%)、2位が静岡県に3.1万人(約14%)、3位と4位が僅差で三重県と群馬県に共に約1.3万人(約6%)、5位が岐阜県の約1.2万人(約5%)と半数以上が東海地方の4県に集住しているのが分かると思います。
在日ブラジル人のほとんどが日系人で1990年(平成2年)に入管法が改正され定住者という就労制限の無い在留資格が日系3世やその配偶者に与えられるようになり、当時バブル景気で人手不足だった日本の企業が競って雇用したため在日ブラジル人人口は急増しました。俗に言うデカセギブームです。ブームに乗って日本に来た日系人ですが3世や配偶者は日系人と言えど日本語がそれほど話せませんでしたので日本語が要らない仕事を選り好み、そしてデカセギでしたのでなるべく稼げる仕事を選り好みする傾向が強かったと思います。そうすると製造業、しかも賃金が高く残業夜勤のある自動車産業のライン作業にという流れが出来、ブラジル人労働者が自動車製造業の集積する東海地方に集住する結果になったわけです。
バブル景気の約30年後の2019年にもアベノミスクで人手不足が起き技能実習制度の活用と共に特定技能という在留資格が作られました。技能実習は在留期限に最長3年か5年という上限があり、転職も原則不可ですが、特定技能は今永住申請を許可するか否かが議論されていますし、職種は人手不足14業種に限定されていますが業種内の転職は自由です。
前述したように技能実習は転職不可なので地方や田舎の過疎地で日本人労働者が採用できない企業も技能実習生を一度受け入れれば3年は人材の確保ができるというのがメリットで、ブラック企業などがそのメリットを悪用して問題になったりするのですが、特定技能は転職自由、そうなると一体どういうことが起きるかというと出入国在留管理庁が出した資料から2021年9月の都道府県別の特定技能外国人の居住者数を見てみましょう。
昨年2021年約3.8万人の特定技能外国人が日本に在留していましたが、1位が愛知県で構成比約8.6%、2位が千葉県で約6.8%、3位が埼玉県で約6%、4位が東京都で約5.6%、5位が大阪府で5.2%という状況です。定住者ほどではないにしろ特定技能も愛知県が日本一という結果です。今コロナによる入国制限で新規入国外国人が来日できず国内にいる外国人労働者の争奪戦みたいな状況になっていますが、地方で働いていた技能実習生を特定技能の在留資格に移行させ愛知県の製造業のような高い賃金が出せる企業が引き抜くみたいな流れが出来ているのかも知れません。
人手不足解消を目的に作られた特定技能の在留資格も現状ですと1号2号で最長10年しか日本に在留出来ず、限られた期間内になるべく稼ぐために賃金の高い都道府県に集住してしまうという定住者の日系ブラジル人と同じ現象が。特定技能にも永住許可を与えようという声が日本政府から出たのもこういう事が背景にあるのかも知れませんし、日本人の若者が逃げ出すような産業が無く賃金の安い地方や過疎地に外国人を定着させるというのもなかなか難しいことですし、人材というのはやはり賃金の高いところに流れるということではないでしょうか。【業務週報2022年1月第3週】