先日台湾の花蓮で台湾鉄道の特急太魯閣号がトンネル内で脱線事故を起こし乗客49名死亡負傷者200名以上の大惨事に。日本でも報道されましたのでご存知の方もいると思いますが、この事故、報道を追うといくつかのヒューマンエラーやミスにミスが積み重なって起こった変な話ですが台湾らしい事故であることが判明。しかもビックリしたのが大惨事の原因となったクレーン車を線路上に転落させたのが不法滞在のベトナム人労働者だったことでした。

事故は台湾の彼岸の清明節の連休中に起こったのですが、事故のあったトンネル入口のちょうど上で鉄道会社が工事をやっていて、本来は休みなのに関わらず、納期が遅れていたためか下請けの台湾人の土建業者が「阿好」という不法滞在のベトナム人を臨時に雇い2人で工事資材のタイヤを積んだクレーン車で工事現場へ。その後何かの理由でクレーン車が工事現場入口の坂で脱輪し、現場にあった重機でクレーン車を釣り上げようとしたのですが、ロープが切れたか外れ、クレーン車は何と線路上に落ち、1,2分後に太魯閣号が通過しブレーキが間に合わず大惨事が起こってしまったようです。

現在検察が捜査取調べ中ですが、焦点はクレーン車を釣り上げようとした重機を台湾人の土建業者、助手のベトナム人どちらが運転したか。クレーン車のドライブレコーダーや2人の証言などからするとベトナム人が運転していた疑いが濃厚のようですが、不法滞在で自動車免許も重機運転の資格も持っていない外国人に重機を運転させ、大惨事を引き起こしてしまった台湾人の土建業者も使用者としての責任を追求されなければ片手落ちでしょう。

阿好は26歳で4年前に来台し台北や高雄で仕事をしていたが失踪、先に来台し台湾花蓮で働いていた実の姉を頼って台湾の東部へ移り、1年ほど前から事故時に一緒にいた土建業者の元で働いていたようですが、給料はまともに払われていなかったようです。阿好の姉はマスコミのインタビューで「我們來台灣賺錢,闆叫什麼做什麼。沒有做闆會罵(私達は台湾に金稼ぎに来てるので社長の言うことに従わないといけない。社長に歯向かうことはできない)」と言っていましたが正にその通りでしょう。重機を運転させられたのも命令、事故後現場から立ち去ったのも、不法就労助長の証拠隠滅のためで命令だったような気がしますが。

この大惨事で台湾におけるベトナム人や外国人労働者のイメージが一層悪くなることが懸念されますし、台湾で外国人犯罪が起こると外国人に不利な判決が出ることが多いですが、今後もこの事件の裁判の経過に注目していきたいと思います。

【業務週報2021/16】