ニッケイ新聞廃刊の報道

先日ブラジルで最後まで発行されていたニッケイ新聞という日本語新聞が年内に廃刊されるというニュースが。ブラジルは日本人移民やその子孫の日系人が多く住むためかつては日本語で書かれた邦字新聞がいくつもあったのですが、日本語が読める1世の減少、スマホで読めるネットニュースの台頭、コロナによる広告収入や購読層である日本人駐在員の激減という事態でとうとう経営が立ち行かなくなり使命を終えるときが来たようです。

日本におけるエスニックメディア

日本で外国人労働者の受け入れが本格的に始まったのは1990年ですが、当時は今みたいにネットが無かったためいろいろな紙媒体の外国語で書かれたエスニックメディアが作られた記憶があります。日本語が読めず母国のニュースに飢えた日系ブラジル人をターゲットにした有料購入の週刊のポルトガル語新聞は最盛期には4紙もありましたし、ポルトガル語のフリーペーパーや求人誌はそれこそ何十誌もありましたから。

在日華字紙の乱立

在日中国人や台湾人をターゲットにした中国語新聞、いわゆる「在日華字紙」は最盛期には50紙以上発行されていたそうです。在日中国人台湾人は在日ブラジル人と違い漢字も分かりますし日本語が出来る人も多いはずなのに何故そんなに多くの中国語新聞が発行されていたかと言うと、怪しい求人広告、国際結婚紹介所、行政書士事務所の広告だらけというオチ、今と比べると昔はのんびりしていたものです。

エスニックメデイアの凋落

このように1990年代に勃興しリーマンショック前にピークを迎えた我が国で発行されるエスニックメディアですが、2010年代に入りスマホが普及するに従いその人気に陰りが。そりゃスマホで無料で母国のニュースを見ることが出来れば誰も有料紙なんか買わなくなるでしょうし、派遣会社の求人広告や航空券、住宅販売などの広告もSNSで自社で打てるようになりましたしね。4紙あった有料のポルトガル語新聞も廃刊になったり、ネット媒体に移行したりという惨憺たる有様に。まあ日本の新聞社も紙媒体が売れずネットに移行しているので致し方ない事態なのでしょうが。

凋落したエスニックメディアの今後

廃刊が決まったブラジルのニッケイ新聞ですが、来年からは日本で派遣会社を経営する篤志家が資金的援助をしてリスタートを図るようです。「邦字紙は一世の減少と共に役割を終える」という諺からすると失礼ですが延命措置としか現状は思えないですが、日本語メディアのまま購読者数を増やす秘策があるのか、日本でも消えつつあるエスニックメディアがいつか再興するときが来るのか注視していきたいと思います。