2020年1月には約266万人の外国人旅行客が来日していたのが3月には20万人以下に減少、今まで右肩上がりだったインバウンド市場がコロナショックにより完全に消滅してしまいました。

もともと外国人旅行客がこれほど急増していたのは2003年にビジット・ジャパン・キャンペーンが当時の小泉政権下の主導で始められ、2016年に安倍政権が2020年に4000万人、2030年に6000万人の外国人旅行客の受け入れを目指すという数値目標を掲げたためです。

途中尖閣問題による中国人旅行客の減少、東日本大震災、日韓問題による韓国人旅行客の減少という蹉跌はありましたが、ノービザ査証免除や観光ビザの要件簡素化、円安誘導などの政策やLCCの台頭などもあり中国人旅行客の「爆買い」が流行語になるほど訪日外国人は右肩上がりで増え続け、観光、宿泊などの産業が地方でも盛り上がり、免税店、民泊などの新たな産業が生まれるほどになりました。それがコロナで東京五輪でインバウンドビジネスが最高潮に達するはずだった2020年に一瞬の内に無くなってしまったとは残念というか歴史の皮肉でしょうね。

消滅してしまったインバウンド市場の回復ですが、思っているより長い時間がかかると思います。コロナは現在も世界中で猛威を振るっていますし、コロナで運休になってしまった航空便はまだ再開の目処が経っていないでしょうし、コロナによる自粛で外国人旅行客を受け入れる宿泊施設や観光バスの会社が現在進行形でバタバタ営業停止や廃業に追い込まれております。来年に延期された東京オリンピックまでにこういったインフラを再構築するのも困難な感がありますが。

また訪日外国人旅行客の急増は人手不足を引き起こし、ここ数年インバウンド人材とよばれる外国人労働者を数多く受け入れ対応しておりました。免税店や観光施設の受付で働く技人国の在留資格の通訳、宿泊施設で働く技能実習生やワーホリ生、飲食店でアルバイトする外国人留学生などです。彼らも仕事が無くなったため自宅待機や雇い止めという苦しい状況に立たされており、雇用の流動化が予想されます。インバウンド市場が回復しても人材獲得の面でも苦戦が予想されそうな気がします。

2020年に4000万人という目標到達寸前に儚くも崩壊したビジット・ジャパン・キャンペーン、再び4000万人に達しようとするのは一体令和何年になるのか、注視していきたいと思います。